
派遣労働者の同一労働同一賃金を実施するために労使協定方式を採用している場合、参考となる基礎資料に、毎年調査の上で厚生労働省ホームページで公表される「一般労働者の賃金の水準」があります。このうち、令和6年度の協定用として示されていた「ハローワーク別地域指数」の一部に誤りがあることが分かりました。
公表されているハローワーク別地域指数434か所中、275か所に誤りがあり、低く算定していたものが121か所、高く算定していたものが154か所あるとのことです。
問題の所在
労使協定方式は、厚生労働省ホームページで公表される業務別の平均賃金と地域指数(都道府県別、ハローワーク別のいずれかを選択)をかけた賃金額と同等以上となるように、各派遣元が労使協定を行います。このため、低く算定されていた121か所の地域指数を用いて協定を行っていた場合、本来の賃金額より少ない賃金額が支払われる可能性があり、派遣労働者に損害が生じる可能性があります。また、高く算定されていた154か所の地域指数を用いていた場合は、派遣元事業者に本来より多い賃金の支払いが発生する可能性もあります。
賃金額への影響については、誤って低く算定していた地域指数の中央値は時給9円の差となり、1日8時間、月20日働いていると仮定すれば、月額で労働者1人当たり1,400円程度の差となります。なお本年4月からの適用であるため、仮に指数を参照し4月から賃金額を変更した場合は、2か月分の賃金に影響している可能性があります。いずれにしても、都道府県労働局で個別に状況を把握して丁寧に対応していきます。(5/24武見大臣記者会見)
このため、厚生労働省は次のように派遣元事業者に対応を要請しています。
誤りのあったハローワーク別地域指数を参照して労使協定を締結された派遣元におかれては、誠に申し訳ありませんが、訂正後のハローワーク別地域指数による一般賃金水準をご確認いただき、自社の賃金制度が同水準に満たなくなる場合には、満たすように労使協定の改定を準備いただくよう、お願いいたします。
労使協定の改定を行う場合、一般に、準備の時間が必要となることから、令和6年9月30日までを経過措置期間(この期間内は現行協定も有効です)といたしますので、大変恐縮ですが、この間に必要な見直しを行っていただきますよう、宜しくお願いいたします。
その際、4月当初から協定見直しまでの間について、現行協定と新協定との差を補うことを労使で検討いただけるよう、お願いいたします。厚生労働省では、この要請を受けて賃金制度の整備・改善等を行う派遣元事業主の方について、その取組をしっかり支えるための支援策を労働政策審議会に諮ってまいります。
「一般賃金通達訂正に係るQ&A」の掲載準備も行われているようです。
労使協定の見直しを行う派遣元事業主への支援策について
これを受けて、6/7に労働政策審議会において、派遣元事業主への対応を協議しています。
具体的な支援については今後、内容を説明するパンフレットが作成されるようです。
私見ですが、地域指数が高くなっていたために、労使協定の金額が高くなっていた場合について、その差額または差額の一部を助成金で支援する、というところに着地するのではないかと考えています。地域指数が低くなっていたために本来の賃金水準に改定することについては、賃金の差額についての支援は無いと考えた方がいいと思います。
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今鶴実践社労士事務所
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