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考え込むように座っている女性

メンタル不調者対応

はじめまして
今鶴実践社労士事務所と申します。

弊所は主に、建設業、道路貨物運送業、介護福祉事業、IT企業等の社会基盤となる事業の人事労務支援を行っている社会保険労務士事務所です。

このページでは、メンタル不調者対応について、職場における心の健康づくりの取り組み方と職場復帰(リワーク)の進め方について解説します。

職場における心の健康と職場復帰を考える

近年、働く人の心の健康を取り巻く環境は、大きな変化に直面しています。

拡大するメンタルヘルスの課題

現在、職業生活や仕事の内容に関して強い不安、悩み、またはストレスを感じている労働者は約6割に上っています。また、業務による心理的な負荷を原因とする精神障害の労災認定件数は、近年増加傾向にあり、令和4年度には過去最多の710件となりました。

さらに、心の健康問題により過去1年間に連続1か月以上休業した労働者の割合は0.6%となっており、特に事業所規模が大きくなるほどその割合が高くなっています。

このような状況の中、心の健康問題への対応は、各事業場にとって非常に大きな課題となっています。

メンタルヘルス対策の重要性

心の健康問題への対策(メンタルヘルスケア)を積極的に推進することは、労働者とその家族の幸福な生活を確保するとともに、事業場の生産性の向上や活気ある職場づくりのためにも不可欠です。

厚生労働省は、労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)を定め、職場における対策を推進しています。

メンタルヘルスケアの三つの柱

メンタルヘルスケアは、中長期的な視点に立って、継続的かつ計画的に行われることが重要です。具体的には、以下の「三つの予防」を円滑に進める必要があります。

一次予防(未然防止)

メンタルヘルス不調を未然に防止するための対策(ストレスチェックの活用や職場環境等の改善など)

二次予防(早期発見・早期対応)

メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行うための対策

三次予防(職場復帰支援)

メンタルヘルス不調で休業した労働者の職場復帰を支援し、再発を防止するための対策

 

セルフケアと「4つのケア」の基本

職場における心の健康づくりを効果的に進めるには、「4つのケア」と呼ばれる取り組みを継続的かつ計画的に行うことが基本となります。

メンタルヘルスケアの「4つのケア」

4つのケアとは、事業場内の関係者がそれぞれの役割を担い、相互に連携しながら進める対策です。

セルフケア

労働者自身が自分のストレスに気づき、対処すること。

ラインによるケア

日常的に労働者と接する管理監督者(上司)によるケア。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医、保健師、衛生管理者、人事労務管理スタッフなどによる専門的な支援。

事業場外資源によるケア

地域の専門機関や外部の専門家による支援(都道府県産業保健総合支援センター、医療機関など)。

働く人自身が行う「セルフケア」

メンタルヘルスケアの出発点となるのがセルフケアです。

心の健康問題の原因は、職場のストレス要因だけでなく、家庭や個人生活などの職場外の要因の影響も受けています。

労働者自身がストレスや心の健康について正しく理解し、自らのストレスに気づき、これに対処するための知識や方法を身につけることが重要です。

セルフケアを促進するために、事業者は、ストレスチェックの実施や、ストレスへの気づき方、対処方法、相談先などの情報提供や教育研修を行う必要があります。

管理監督者による「ラインによるケア」の役割

管理監督者(ライン)は、部下の状況を日常的に把握し、職場のストレス要因を把握・改善できる立場にあります。

管理監督者は、職場の環境改善に加え、部下からの相談対応や、休業した労働者の職場復帰支援など、多岐にわたる重要な役割を果たします。

管理監督者(上司)の重要な役割

心の健康問題の早期発見と適切な対応(二次予防)は、不調の長期化を防ぐ上で非常に重要です。特に、部下と日常的に接する管理監督者(上司)が果たす「ラインによるケア」が鍵となります。

「いつもと違う」部下のサインに気づく

ラインによるケアで最も大切なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下の様子にいち早く気づくことです。普段の行動様式から外れた変化が見られた場合、その背後に心の不調が隠れている可能性があります。

「いつもと違う」様子の例として、以下のようなものが挙げられます。

勤務状況の変化

遅刻、早退、欠勤の増加、無断欠勤、残業・休日出勤の不釣合いな増加。

業務の変化

仕事の能率低下、思考力・判断力の低下、業務結果がなかなか出てこない、ミスや事故の増加。

言動・態度の変化

報告や相談、職場での会話がなくなる(または逆に増える)、表情に活気がなく動作に元気がない、不自然な言動、服装の乱れや不潔さ。

適切な相談対応の技術

管理監督者は「いつもと違う」と感じた部下に対して職務上対応する必要がありますが、病気の判断はできません。病気の判断は産業医や医師の仕事です。

管理監督者は、部下の話を「積極的傾聴」でよく聴くことが重要です。部下に対し、上司は自分を理解してくれている、という安心感を与えることで、心の不調の悪化を防ぐことにつながります。

話を聴いた上で、適切な情報を提供し、必要に応じて産業医や事業場内産業保健スタッフ、または事業場外資源(外部の相談機関など)への相談や受診を促す必要があります。

ストレスチェック制度の活用

労働者50人以上の事業場では、ストレスチェック制度の実施が義務付けられています(50人未満の事業場は現在、努力義務です)。

この制度の主な目的は、労働者自身がストレスに気づき対処できるように支援する一次予防と、職場環境の改善に役立てることです。ストレスチェックの結果を基にした集団分析は、職場のストレス要因を客観的に把握し、管理監督者と産業保健スタッフが協力して職場環境を改善する上で重要な手がかりとなります。

休業中の情報提供と主治医との連携

職場復帰支援のプロセスは、休業開始直後のケアから始まります。

<第1ステップ>休業中のケア

労働者が休業に入った際(第1ステップ)には、療養に専念できるよう、不安を軽減するための支援が重要です。

情報提供

傷病手当金などの経済的な保障、不安や悩みの相談先(公的・民間の職場復帰支援サービスなど)、休業の最長(保障)期間などについて情報提供します。

孤独感の解消

休業中に労働者が精神的な孤独や復職への不安を感じないよう、適切なタイミングで必要な連絡事項を伝え、情報を提供することが望まれます。

<第2ステップ>主治医の判断の精査

労働者が職場復帰の意思を示し、主治医による「職場復帰可能」の診断書が提出されたら(第2ステップ)、事業者はその内容を精査します。

主治医の診断は、日常生活における病状の回復程度に基づいて判断されていることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないことに注意が必要です。

このため、産業医等(事業場内産業保健スタッフ等)が、主治医の判断内容と、職場で必要とされる業務遂行能力の内容を照らし合わせ、採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。円滑な連携のために、あらかじめ産業医等を通じて、職場で求められる業務遂行能力に関する情報を主治医に提供しておくことが望ましいとされています。

<第3ステップ>職場復帰の可否判断とプラン作成

最終的な職場復帰の決定(第4ステップ)の前に、第3ステップとして、安全でスムーズな復帰のために必要な情報収集と評価が行われます。

評価は、以下の多角的な視点から総合的に行われます。

労働者の意思

職場復帰に対する意思や就業意欲の確認。

労働者の状態

治療状況、病状の回復状況、適切な睡眠覚醒リズムや注意力・集中力の回復、安全な通勤が可能か。

職場環境

業務や職場との適合性、職場側による支援準備状況。

これらの評価に基づき、職場復帰が可能と判断された場合に、具体的な「職場復帰支援プラン」が作成されます。

職場復帰支援(リワーク)の5つのステップ

心の健康問題により休業した労働者が、安全で円滑に職場復帰し、業務を継続できるように支援することは、メンタルヘルス対策の三次予防として極めて重要です。職場復帰は、事業者、労働者、そしてその家族にとって重要な課題です。

職場復帰支援プログラムの策定

円滑な職場復帰を実現するためには、休業の開始から通常業務への復帰までの流れをあらかじめ明確にした職場復帰支援プログラムを策定しておく必要があります。

このプログラムは、個々の労働者ごとに具体的な支援内容を定めた職場復帰支援プランの土台となります。

職場復帰支援の5つのステップ

心の健康問題により休業した労働者への職場復帰支援は、以下の5つのステップで構成されることが標準的な流れとして示されています。

<第1ステップ>休業開始及び休業中のケア

働者からの診断書提出により休業が始まります。療養に専念できるよう、必要な事務手続きや経済的な保障(傷病手当金など)の情報提供、不安や悩みの相談先の紹介などを行います。休職規定による休職命令(辞令交付)も忘れずにしましょう。

<第2ステップ> 主治医による職場復帰可能の判断

労働者からの復帰の意思表示に基づき、主治医による職場復帰が可能であるとの診断書の提出を求めます。

<第3ステップ> 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

最終決定の前段階として、必要な情報を収集・評価し、職場復帰の可否を事業者が判断し、具体的な支援計画(職場復帰支援プラン)を作成します。

<第4ステップ> 最終的な職場復帰の決定

働者の状態の最終確認を行い、事業者による最終的な職場復帰の決定と、就業上の配慮の内容を通知します。

<第5ステップ> 職場復帰後のフォローアップ

帰後、管理監督者と産業保健スタッフ等による継続的な観察と支援を行い、再発防止を図ります。

一部の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構で、リワーク支援を行っています。

北海道障害者職業センター

岩手障害者職業センター

千葉障害者職業センター

東京障害者職業センター

岐阜障害者職業センター

兵庫障害者職業センター

​・徳島障害者職業センター

職場復帰支援プランと復帰後のフォローアップ

職場復帰支援プランの作成と、復帰後の継続的なフォローアップは、再発を防ぎ、長期的な就業を支える上で欠かせません。

職場復帰支援プランの内容

第3ステップで作成される職場復帰支援プランには、以下の項目を具体的に盛り込みます。

職場復帰日

管理監督者による就業上の配慮

業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮など。

人事労務管理上の対応

配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否。

フォローアップ

管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法や、就業制限等の見直しを行うタイミング。

段階的な復帰のための「試し出勤制度」

正式な職場復帰の決定の前に、試し出勤制度を社内制度として設けることは、休業していた労働者の不安を和らげ、復帰の準備を行う上で有効です。

試し出勤制度には、以下のような例があります。

模擬出勤

勤務時間と同様の時間帯にデイケアなどで軽作業を行ったり、図書館などで過ごしたりする。

通勤訓練

自宅から職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅する。

試し出勤

本来の職場などに、復帰の判断等を目的として試験的に一定期間継続して出勤する(業務は行わず職場の雰囲気に慣れることを優先する場合もある)。

復帰後の就業上の配慮と原則

職場復帰に際しては、元の慣れた職場へ復帰させることが原則です。新しい環境への適応には心理的負担が伴うため、まずは元の職場で業務負担を軽減しながら経過を観察するのが望ましいとされています。ただし、異動等が発症の誘因となったケースでは、配置転換や異動を考慮すべきです。

復帰後は、労働負荷を軽減し、段階的に元の状態に戻していく配慮が重要です。具体的な配慮の例としては、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業・深夜業務の禁止、出張制限などが挙げられます。

<第5ステップ>継続的なフォローアップ

職場復帰後(第5ステップ)は、管理監督者による観察と支援に加え、産業保健スタッフ等による定期的なフォローアップを実施し、再発防止に努めます。

特に、疾患の再燃・再発や新しい問題の発生の有無を早期に気づき、迅速に対応することが不可欠です。勤務状況や業務遂行能力、治療状況(通院状況など)を客観的に評価し、問題が生じた場合は、関係者間で連携して職場復帰支援プランの見直しを検討します。

また、職場復帰した労働者だけでなく、その管理監督者や同僚等に過度の負担がかからないよう配慮することも大切です。

職場復帰支援は、休業者の回復だけでなく、職場全体の環境改善にもつながる継続的な取り組みと言えます。

▶メンタル不調者対応のご相談を承ります
・メンタルヘルス対策に取り組みたいとお考えのお客様

・メンタルヘルス対応の体制づくりをお考えのお客様

 

・リワーク支援に取り組まれるお客様

・休職規程の策定、見直しをお考えのお客様​​​​

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