今鶴実践社労士事務所|東京都中央区
トラック運送業の労働時間管理
目次
改正改善基準告示への対応
昭和 42 年の「29 通達」、昭和 54 年の「27 通達」、平成 1 年の「改善基準告示」を経て、2024 年 4 月から、 「改正改善基準告示」が適用開始となりました。デジタコ導入済みの企業様は多いと思われますが、残業上限規制と あわせて、デジタコデータを活かし、自動車運転者の「拘束時間」「休息期間」「運転時間」の管理と、休憩と待機の区別をしっかりして「残業時間」の把握に努めることが重要です。
・2024/5/26 改善基準告示はなぜ改正されたのか?①
・2024/5/30 改善基準告示はなぜ改正されたのか?②
・2024/6/9 改善基準告示はなぜ改正されたのか?③
▶ドライバーの労働時間管理
ドライバーの労働時間は「稼働時間」の多くを占めるものですので、この労働時間を管理することは2024年問題の対応策として大変重要です。ドライバーの労働時間を有効活用するためには、IT技術を活用した稼働時間の管理が不可欠です。例えば、GPSとスマートフォン・タブレットを使用した勤怠システムの導入で、拘束時間・休憩時間・連続運転時間・休息時間等の管理が容易になります。また、勤務時間の考え方では「待機時間」と「休憩時間」の切り分けは非常に重要ですので、研修の開催等で認識の統一を図ることも対策のひとつに考えられます。
▶運賃値上げ交渉
公正取引委員会が令和 5 年に行った特別調査では、労務費、燃料費等のコストの転嫁が道路貨物運送事業においては進んでいないことが判明しました。特に労務費の転嫁が進んでいません。このような状況下では、他業種とくらべて低いとされるドライバーの賃上げも思うように進まず、転職を選ぶ者も出てきます。価格転嫁と価格交渉、運賃値上げと賃上げは道路貨物運送事業にとって、大変重要な課題です。
・2023/11/29「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が公表されました。
▶残業時間減によるドライバーの給与減への対応
残業時間減によるドライバーの給与減への対応も重要です。給与減によりドライバーが退職することのないように、給与制度の見直しが必要になるでしょう。これには売り上げ減少への対応策としての「生産性の向上」があって実現が可能となるものです。同時進行で両輪のような推進が必要です。
▶荷主への協力要請
2024年問題の課題としては、荷主への協力要請も不可欠です。適正な運賃での取引、荷積み荷下ろし時間の削減のための施策など、トップマネジメントには、荷主との連携を図るために、自らが行動することが求められます。
▶残業上限規制等の対応はこれから
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が 2024/4/11 に衆議院で、2024/4/25 に参議院で可決 しました。荷主企業、物流事業者、一般消費者の協力体制のもと、商慣行の見直し,物流の効率化,荷主・消費者の行動変容についての抜本的・総合的な対策が求められています。特に、他業種と同様の残業上限年 720 時間 へのすみやかな移行が附帯決議されました。
・2024/4/25 貨物自動車運送事業法改正案が参議院でも可決しました。 附帯決議(衆議院4/10)(参議院4/25)
▶まとめ
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デジタコ等を活用し、「拘束時間」「休息期間」「運転時間」を管理するとともに、休憩と待機を区別して残業時間を正確に把握することが重要です
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稼働時間減による売上・給与の減少には、「生産性の向上」と「給与制度の見直し」を両輪で進める必要があります
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運賃値上げ交渉・荷主への協力要請も、2024年問題対応の両輪をなす取り組みです。
▶簡易原価計算ツールをご用意しました
令和7年6月に成立・公布した「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和7年法律第60号)」により、トラック運送事業者が自ら貨物を運ぶときや、他のトラック運送事業者等に運送を委託するときは、国土交通大臣が定める「適正原価」を継続して下回らないようにすることとされ、本規定については、同法の公布から3年以内に施行することとされているところです。
国交省でも、令和8年7月17日より、適正原価の設定に向けた有識者検討会が始まっています。
原価を把握する体制をつくっておくことは、現在のトラック運送業の課題のひとつです。
弊所では簡易版の原価計算ツールを作成して「データで見える化する、原価と人材のギャップ」ページで公開しています。
ぜひお試しください。
▶業界平均と比べる「経営ベンチマーク診断」
原価を計算できても、それが業界の中でどのくらいの水準にあるのかが分からなければ、運賃交渉の材料にも、経営改善の優先順位づけにもなりません。
公益社団法人全日本トラック協会「経営分析報告書」(令和6年度決算版、全国2,631者の集計)によれば、車両規模によって収益力には極端な差があります。10台以下の事業者の営業損益率はマイナス2.3%(赤字)である一方、101台以上ではプラス2.3%。人件費比率も34.0%〜39.7%、燃料油脂費比率も10.8%〜17.0%と、地域によって大きな幅があります(注)。
「うちの数字は、同規模・同地域の事業者と比べてどうなのか」——それが分かれば、運賃交渉や経費見直しの優先順位が見えてきます。
そこで、損益明細書(全ト協への事業報告書と同じ様式)の金額を入力するだけで、営業損益率・経常損益率・人件費比率・燃料油脂費比率など8つの指標を自動計算し、車両規模別・地域別の業界平均と即座に比較できる「経営ベンチマーク診断」を公開します。
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車両規模別(10台以下〜101台以上)・地域別(北海道〜九州)で比較対象を選択
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損益明細書の実額を入力するだけで、比率計算は不要
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業界平均との差を自動診断し、改善の着眼点をコメントで提示
注:公益社団法人全日本トラック協会「経営分析報告書」(令和6年度決算版、令和8年3月発行、対象期間:令和5年10月〜令和7年8月、有効回答2,631者)より。車両規模別・地域別はそれぞれ独立した集計軸のため、両方を組み合わせたクロス集計値ではありません。10台以下・101台以上等、集計事業者数が少ない区分は数値の振れ幅 にご留意ください。
ドライバーへの「12項目指導」も、対応が必要です
改善基準告示への対応と並んで見落とされがちなのが、ドライバーに対する法定の指導・監督義務です。
貨物自動車運送事業者は、国土交通省告示に基づき、運転者に対して次の12項目の指導・監督を行う義務があります。
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事業用自動車を運転する場合の心構え
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事業用自動車の構造上の特性
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貨物の正しい積載方法
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過積載の危険性
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危険物を運搬する場合の注意点
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適切な運行経路及び当該経路における道路及び交通の状況
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危険の予測及び回避、緊急時における適切な対応
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運転者の運転適性に応じた安全運転
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交通事故に関わる運転者の生理的・心理的要因(過労・飲酒運転等への対処を含む)
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健康管理の重要性
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安全性の向上を図るための装置(運転支援装置等)を備える事業用自動車の適切な運転方法
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交通事故に関する運転者の理解の重要性(ドライブレコーダーの活用等)
これに加えて、初任運転者には実際に運行させての実技指導、高齢運転者(65歳以上)には適齢診断の結果を踏まえた指導、事故を起こした運転者には特別な指導と適性診断が求められます。
これらは実施するだけでなく、指導・監督の記録を作成し、一定期間保存する義務もあります。記録の未整備や未実施は、行政監査で指摘を受けるポイントの一つです。
弊所では、指導計画・記録様式の整備、実施状況の点検、行政監査への対応をご支援しています。
デジタコの記録は、労働時間管理の「証拠」になります
デジタコ(デジタル式運行記録計)は、運行管理のためだけの機器ではありません。12項目指導のうち「運転者の運転適性に応じた安全運転」でも、デジタコの記録から運転のクセを把握することが取り上げられているように、改善基準告示が定める拘束時間・運転時間・休息期間の遵守状況を、客観的に裏付ける記録でもあります。
労働基準監督署の調査や、未払い残業代をめぐるトラブルでは、本人が記入する日報等の「自己申告」よりも、デジタコのような客観的な記録が重視される傾向があります。日報とデジタコの記録に齟齬がある場合、その齟齬自体が問題視されることもあります。
弊所でご確認いただきたいポイントは次のとおりです。
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日報等の自己申告と、デジタコの客観的記録が一致しているか
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乖離がある場合、その理由が記録・説明できる状態になっているか
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デジタコの記録から、拘束時間・運転時間・休息期間が改善基準告示の基準内に収まっているか、定期的に確認する仕組みがあるか
デジタコの「数値の読み方」自体は運行管理システムのベンダー・運行管理者研修の領域ですが、その記録を労働時間管理・法令遵守の証拠としてどう活かすかは、労務管理の専門領域です。弊所では、デジタコデータを活用した労働時間管理体制の構築や、日報との突合、改善基準告示の遵守状況確認をご支援しています。
弊所がご支援できること
▶支援内容
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原価等、何を、どう測るかというデータ収集の設計
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適正原価への対応
まずはお話をお聞かせください
2024年4月から順次適用 残業上限規制
自動車運転者は、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。
一般の労働者と異なり、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6か月平均を80時間以内とする規制および時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回までとする規制は適用されません。
なお、別途、運転時間や勤務間インターバルについて定めた「改善基準告示」を遵守する必要があります。
2024年4月から順次適用 改正改善基準告示
・自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 (改善基準告示)



厚生労働省リーフレット