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逆パワハラでもう無理と思ったときに読む本


本書では、部下からの刺々しい仕打ちや反抗的な態度、嫌味のある言葉などに苦しむ上司の状況を取り上げています。上司の立場にある人々は、自分の気持ちを押し殺して「上司なら冷静に」と振る舞おうとしますが、抑圧された感情は心に病を生じさせることがあり、良いことではありません。そこで、逆パワハラで苦悩する上司の気持ちを言語化するとともに、その具体的な対処法を提供してくれます。

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逆パワハラの進行パターンを理解する

本書では、部下からの反発がエスカレートする状況を3つのパターン(ゾーン)に分類して説明しています。


1. 部下からの奇襲(突発性の高いもの): 驚きゾーン。


2. 部下からの反抗(継続性の高いもの): 忍耐ゾーン。


3. 部下からの排斥(陰湿性の高いもの): 助けてゾーン。


特に、「驚きゾーン」で対応を誤ると、長期的に組織内の連携と信頼が損なわれ、生産性や競争力の低下につながるリスクがある、としています。


上司のための処方箋

逆パワハラに対処し、部下がモンスター化(反抗的な行動が常態化)した状況を改善するための処方箋が提示されています。重要なのは、感情的にならず、冷静に振り返ることです。


• 境界線を引くこと: 部下の怒りの感情を丸腰で受けないように「安全圏」に移動し、相手に振り回されないように物理的・心理的な距離を取るというイメージで、自分の立場と役割、責任を明確にすることが重要。


• 「私たち」や「チーム」という表現の使用: 対立を解消し、協力的になるために、話題の主語を「私たち」や「チーム」に変え、共通の目的に基づいて対話を重ねること。


• 客観的な事実やデータを主語にする: 感情論を避け、客観的な事実やデータに基づいて議論を進めること。若手メンバーのモチベーション向上にもつながります。


• 結節点(共通の認識や利益)を見つける: 上司と部下のコミュニケーションの接点を探し、共有できる面積を増やしていくことが推奨されています。


世代間ギャップを乗り越えたチーム作りについて

前著「Z世代に嫌われない上司嫌われる上司」と「逆パワハラでもう無理と思ったときに読む本」は、共通して世代間の価値観のズレとコミュニケーションの失敗が職場での摩擦の根本原因であると指摘していて、ギャップを乗り越えるための具体的な戦略を提示しています。


1. 世代間ギャップの認識とアンラーニングの重要性

「Z世代に嫌われない上司嫌われる上司」では、上司世代が良かれと思って行った行動(良かれと思って褒めたのに、飲みに誘ったのに、アドバイスをしたのに)が部下には伝わらず、むしろ嫌われる原因になっている現状が描かれています。その背景には、Z世代が持つ独自の価値観(例えば、仕事よりもワークライフバランスを優先する傾向や、キャリアを個人のスキルや経験の積み上げとして捉える転職前提の考え方)があります。

上司世代がコミュニケーションで失敗する大きな理由の一つは、「時代遅れの知識や過去の成功体験に固執し過ぎる」こと、すなわち「アンラーニング」ができていない点にあります。上司は、自身の考えをベースに動く「上司中心の考え方」に陥ってしまう可能性があり、常に検証することが必要です。

チーム作りにおいて、上司はまず、過去に学んだ価値観や認識を選択し、新しい知識やスキルで修正する「アンラーニング」を実践する必要があります。


2. コミュニケーションの質的転換

両書を通じて、世代間ギャップを解消し、健全なチームを構築するためには、コミュニケーションの質の転換が不可欠であることが強調されています。


感情への共感と傾聴

部下が悩みを相談してきた際、上司が「解決策」にすぐに走るのではなく、まず「気持ちを聴く」ことに注力すべきです。特に「共感」(相手の感情を理解しようとする心理的プロセス)と「同感」(自分も同じように考えること)は区別され、傾聴すべきなのは「共感」であるとされています。

逆パワハラの状況下でも、上司が部下の不満や怒りを「感情的に取り乱している」として扱うのではなく、傾聴と共感を試み、感情のポジション関係を把握することが、ストレスを乗り越えるための重要なステップとなります。


指示の明確化と目的からの思考

Z世代は「コスパ」や「タイパ」(時間対効果)を重視し、非効率的な仕事や意味のない作業を嫌う傾向があります。これに対応するためには、上司は「目的から考える」姿勢を持ち、業務の必要性や目的について検討し、行動基準を明確にルール化することが有効です。

また、指示する際には、具体的な基準として「重要度」「緊急度」の共通認識を部下と持つことが、解釈のズレを防ぐために必要です。


3. 多様性の受容とチーム目標への焦点化

世代間ギャップを乗り越えたチーム作りにおいて最も重要な要素の一つは、多様性を理解し受け入れることです。ただし、「多様性の受容」は部下の「ワガママを見過ごす」ことや「放任」とは異なります。

上司は、組織の方向性や生産性の向上

ニケーションの焦点は、個人の問題(誰が悪いか、感情的な対立)ではなく、「私たちが目指しているゴール」や「全体(会社)の利益」という共通の方向性に合わせるべき、ということでしょう。


世代間ギャップを乗り越え、逆パワハラといった深刻な問題を防ぐチーム作りは、上司側が「自ら変わる」ことから始まります。過去の成功体験に固執せず(アンラーニング)、部下の価値観や感情を深く理解し(共感)、そして対立が生じた際には、個人攻撃や感情論に終始せず、明確な行動基準とチーム全体の目標に基づいて冷静に対処する姿勢が求められています。


弊所は主に、建設業、トラック運送業、介護福祉事業、IT事業等の社会基盤となる事業の人事労務支援を行っている社会保険労務士事務所です。

業務遂行には様々なツールを使って生産性の向上に努めていますが、電子申請・DX・AIと、経営環境の変化をお感じの企業様もどうぞお気軽にご相談ください。


今鶴実践社労士事務所


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