価格交渉はどう変わるか?改正下請法が定める「価格決定」と「支払い」の新ルール
- 今鶴 孝

- 5 日前
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一方的な価格決定はNG。中小受託事業者の資金繰りを圧迫する手形も禁止に
改正下請法は、公正な取引を実現するため、具体的な商慣習の是正に踏み込んでいます。ここでは特に重要な二つの変更点、「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」と「手形払等の禁止」について解説します。
協議を適切に行わない代金額の決定の禁止
従来の下請法には、代金を不当に安く買い叩く行為(買いたたき)を禁止する規定がありましたが、今回の改正では、価格交渉プロセスに着目した規定が新設されました。
• コストが上昇しているにもかかわらず、発注者側が協議に応じなかったり、コスト増に見合わない価格を一方的に決定したりする慣習が、価格転嫁を阻害していました。
• 中小受託事業者が価格協議を求めたにもかかわらず、協議に応じない、または必要な説明を行わないなど、一方的に代金を決定して中小受託事業者の利益を不当に害する行為が禁止されます。
• これは、単に価格が低いかどうかだけでなく、価格交渉の場が適切に設けられ、必要な情報交換や説明が行われたかが問われることを意味します。価格決定のプロセスが重要になります。
手形払等の原則禁止による資金繰り改善
中小事業者の資金繰り負担を軽減するため、支払手段に関する規制も強化されます。
• 手形等による支払いは、中小受託事業者(受注者)に手形割引料などの資金繰りの負担を強いる商慣習として根強く残っていました。
• 中小受託事業者保護の観点から、支払手段としての手形払いが禁止されます。
• これにより、製品受領日から現金受領までの期間が大幅に短縮されます(例:支払期間60日+手形サイト60日で計120日かかっていたものが、支払期間60日となる)。電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに満額の現金を得ることが困難なものは認められません。
法の適用範囲の拡大と用語の見直し
法の適用逃れを防ぐため、従来の資本金基準に加え、「従業員数」が新たな適用基準に追加されました。
• 製造委託等の場合、従業員数300人以下の事業者が対象となります。
• 法律名が改正されたほか、「下請」という用語が対等でない関係性を想起させるとの指摘を受け、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」に改められました。
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