今鶴実践社労士事務所|東京都中央区

兼務役員の雇用保険加入
はじめまして
今鶴実践社労士事務所と申します。
弊所は主に、建設業、道路貨物運送業、介護福祉事業、IT企業等の社会基盤となる事業の人事労務支援を行っている社会保険労務士事務所です。
このページでは、兼務役員が雇用保険に加入できる要件について解説をします。
雇用保険と兼務役員
会社の役員でありながら、従業員としての業務も兼任する「兼務役員」の雇用保険の取り扱いは、分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。まず、法人の役職員の雇用保険における基本的な取り扱いを確認してみましょう。
法人の役職員は、原則として雇用保険の被保険者とはなりません。例えば、株式会社の取締役や合同会社の社員等は、原則として雇用保険の被保険者とはなりません。法人の代表者(代表取締役、代表社員等)も被保険者とはなりません。
しかし、「兼務役員」と呼ばれる特定の立場にある方は、例外的に被保険者として認められる場合があります。
兼務役員は、取締役等の役員の身分を持ちながら、同時に部長、支店長、工場長など、会社の従業員としての身分も有している者を指します。
兼務役員が雇用保険に加入できる要件
兼務役員が雇用保険の被保険者として認められるためには、次のような「労働者性」が要求されます。
労働者性の強さ
雇用関係(従業員)に基づき労働の対償として支払われる賃金と、委任関係(役員)に基づき支払われる役員報酬との支払い比率(割合)等の面からみて、労働者性が強い場合。
雇用関係の明確な存在
就労実態や給料支払などの面からみて労働者的性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合。有給休暇が他の労働者と同様に与えられている等はその証明になり得ます。
兼務役員に関する手続きと提出書類
兼務役員を雇用保険の被保険者として取り扱う際には、通常の従業員とは異なる特別な手続きが必要になります。
資格要件証明書の提出
兼務役員が被保険者として扱われるかどうかの判断資料として、「兼務役員にかかる雇用保険被保険者資格要件証明書」の提出が求められます。
この証明書は、特に以下のような場合に、関係書類を添えて必ず提出することになります。
1. 兼務役員として新たに雇用されたとき。
2. 従業員から兼務役員へまたは兼務役員から従業員へ変わったとき。
3. 賃金と役員報酬の比率に変動があったとき。
資格取得届および資格喪失届
新たに雇用されたときや、資格要件を満たすようになったにもかかわらず、まだ資格取得届が未提出であれば、上記の証明書に添えて資格取得届を提出します。
反対に、兼務役員が被保険者資格要件を欠くに至ったときは、その事実のあった日の翌日から10日以内に、上記の証明書を添えて資格喪失届を提出しなければなりません。役員への就任や、週所定労働時間が20時間未満になった場合などで被保険者とならなくなった場合も、資格喪失届が必要です。
提出を求められる主な関係書類
兼務役員について雇用保険の資格取得届を提出する場合や、資格要件証明書を提出する際には、雇用関係を確認するための書類の提出が必要です。これには以下のものが含まれます。
・登記事項証明書(登記簿謄本)
・定款
・役員会議事録
・就業規則
・賃金台帳
・出勤簿
・労働者名簿
・雇用契約書等(賃金の支払状況を証明できる書類)
賃金の取り扱いに関する重要な留意点
兼務役員の場合、賃金の取り扱いについて特に注意が必要です。
雇用保険の対象となる賃金
雇用保険料の算出や、雇用保険被保険者離職証明書に記載する賃金は、従業員の身分(雇用関係)に対して支払われる賃金のみが対象となります。
役員報酬の除外
役員報酬部分は、労働保険料の算定基礎とならないもの(賃金と解されないもの)として、賃金日額の算定基礎には含まれません。
賃金の明確化
賃金台帳等に、従業員としての賃金と役員報酬とを明確に区分しておく必要があります。
「兼務役員にかかる雇用保険被保険者資格要件証明書」には、役員報酬(月額/賞与)と、従業員(雇用)関係に基づく賃金(給料月額/日給/賞与)を記載する欄が設けられています。また、役員としての名称(例:「取締役」)と、従業員としての職名(例:「工場長」「営業部長」)の両方を記入する必要があります。
兼務役員の雇用保険加入に関する各種の届出等の事務処理については、社会保険労務士が代行することができます。
どうぞご相談ください。
