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仕事中の作業員

中小事業主、一人親方等の労災保険

はじめまして
今鶴実践社労士事務所と申します。

弊所は主に、建設業、道路貨物運送業、介護福祉事業、IT企業等の社会基盤となる事業の人事労務支援を行っている社会保険労務士事務所です。

このページでは、中小事業主、一人親方、フリーランス、海外派遣者等が入れる労災保険「特別加入制度」について解説をします。

労働者だけでない、労災保険の制度

「労災保険」と聞くと、多くの人は正社員やパートタイマーといった「労働者」を対象とした制度だと考えるでしょう。怪我や病気の際に手厚い補償が受けられる、会社員のためのセーフティネットというイメージが強いかもしれません。

一方で、中小企業の社長、フリーランス、あるいは海外で働く人はどうなるのでしょうか?「自分は労働者ではないから」と、万が一の際の補償を諦めてはいないでしょうか。

実は、労働者でなくても労災保険に加入できる「特別加入制度」が存在します。この制度は、中小事業主、一人親方・フリーランス、海外派遣者など、加入する方の立場によっていくつかの種類に分かれており、その内容は意外と知られていません。この記事では、あなたを守るかもしれない、労災保険「特別加入」を解説します。

拡大する「特別加入」の対象者

特別加入制度は、一般的に考えられているよりもはるかに広い範囲の人々を対象としています。この制度は、法律上の「労働者」ではないものの業務の実態から労働者に準じて保護するにふさわしい人々・・・具体的には中小事業主、一人親方等、そして海外派遣者等を対象として設けられています。

特に、中小企業の事業主(社長や役員)は、以下の企業規模の要件を満たし、「労働保険事務組合」を通じて手続きをすることで加入ができます。

金融・保険・不動産・小売業: 常時使用する労働者数が50人以下
卸売・サービス業: 常時使用する労働者数が100人以下
その他の事業: 常時使用する労働者数が300人以下

昨今、注目すべきは、近年の働き方の多様化に対応し、「特定フリーランス事業」が対象に追加されたことです。これにより、以下のような職種の方々も「特別加入団体」を通じて加入できるようになりました。

・ITフリーランス(システム設計者など)
・デザイナー、コンテンツ制作者
・翻訳家、通訳
・講師、インストラクター
・営業
・調査、研究、コンサルティング

このように、経営者からフリーランスまで、多くの人が万が一のリスクに備えることができます。

海外派遣と海外出張は別モノです

特別加入は万能の保険ではありません。加入していても、状況によっては労災と認定されず、保険給付の対象とならない意外なケースが存在します。制度の恩恵を受けるためには、以下の点に注意が必要です。

事業主本来の業務しか行っていない場合

注意すべきは、事業主が会議や書類作成などのデスクワーク、経営判断といった管理業務のみを行っている時間は対象外となる点です。労災の対象となるのは、あくまで労働者に準じた現場作業などに従事している間の災害に限られます。
家族従業員のみの事業である場合

労災保険は労働者の保護が目的であるため、従業員が親族のみで構成される家族経営の事業などは、特別加入が認められない場合があります。
業務と無関係な私的行為による場合

通勤の途中で、合理的な経路から外れて映画館に立ち寄るなど、私的な用事を済ませている間に発生した事故は、通勤災害とは認められません。
本人に故意や重大な過失がある場合

加入者本人の故意(自傷行為など)や、飲酒運転といった重大な過失によって発生した災害は、保険給付が制限されたり、行われなかったりすることがあります。
業務が原因ではない病気の場合

健康診断で判明した高血圧などの病気や、持病が悪化したケースは、業務との直接的な因果関係が認められない限り、労災保険の対象にはなりません。

加入には「事務組合」や「団体」の経由が必須

最後に、手続きに関する意外なポイントです。

労災保険の特別加入は、個人が国(労働基準監督署など)に直接申し込む仕組みにはなっていません。必ず特定の団体を経由する必要があります。

中小事業主の場合

厚生労働大臣の認可を受けた「労働保険事務組合」を通じて、特別加入の申請手続きを行います。
一人親方やフリーランスの場合

都道府県労働局長の承認を受けた「特別加入団体」を通じて、手続きを行います。

この仕組みは一見すると手間に感じるかもしれませんが、専門の団体が複雑な労働保険事務の処理を代行してくれるという大きなメリットがあります。事業主やフリーランスが本業に集中できるようサポートしてくれる存在とも言えるでしょう。

 

特別加入に関する各種の届出等の事務処理については、社会保険労務士が代行することができます。新規適用手続をまだ行っていない事業主の方は、どうぞご相談ください。

 

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