今鶴実践社労士事務所|東京都中央区
感覚ではなく、データで経営判断を
データで見える化する、原価と人材のギャップ
目次
1. なぜ「勘と経験」だけでは立ち行かなくなったのか
2. トラック運送業:運送原価の見える化から始める経営改善
▶簡易原価計算ツールをご用意しました
3. 介護福祉事業:人員配置とサービスのギャップ分析
4. 介護福祉事業:処遇改善加算額と月額賃金改善額の概算額
▶単価検索・処遇改善加算額・月額賃金改善額計算ツールをご用意しています
5. 介護福祉事業:需給ギャップ分析×労働市場のクロス分析
▶川崎市・横浜市・大田区 通所介護 需給ギャップ×労働市場 クロス分析
▶市川市・船橋市・習志野市・八千代市 通所介護 需給ギャップ比較
6.業種を問わず使える:人件費構造のギャップ分析
▶A社(従業員30名規模・トラック運送事業者、仮想モデル)
8. データが導く、次の一手
9. 弊所がご支援できること

なぜ「勘と経験」だけでは立ち行かなくなったのか
「なんとなく人が足りない」「なんとなく利益が薄い」——こうした感覚は、多くの場合正しいものです。しかし、感覚だけでは、どこから手をつければよいかが見えてきません。
2024年問題、処遇改善加算の期中改定など、業界を取り巻く制度は年々変化のスピードを増しています。感覚に頼った経営判断では、変化に対応しきれず、後手に回るリスクが大きくなっています。
「なんとなく苦しい」を、具体的な数字に落とし込むこと。それが、対策の第一歩です。
トラック運送業:運送原価の見える化から始める経営改善
多くの運送事業者様は、月次の収支(P/L)はきちんと管理されています。しかし、収支の把握と、原価計算はまったく別のものです。収支は「いくら儲かったか」を映しますが、原価計算は「1km、1台、1つの取引先あたり、いくらかかっているか」を映します。会社全体としては黒字でも、実は特定の取引先やルートだけが原価割れしている——収支だけを見ていては、そうした状態に気づけません。
燃料費、人件費、車両維持費、運行効率——これらを一つひとつ分解して初めて、「今の運賃が、実際に利益を生んでいるかどうか」が見えてきます。
弊所代表が発案・監修し、野口志穂氏が開発した原価計算ツールは、こうした運送原価の見える化を目的に作られました。以下は、その考え方を簡易化した体験版です。実際の数値を入力して、1kmあたりの概算原価をお試しください。
介護福祉事業:人員配置とサービスのギャップ分析
介護業界でよく知られる人員配置基準「3対1」——これは、ご利用者3人に対して常勤換算で1人の介護・看護職員を配置する、という基準です。しかし、この基準はあくまで常勤換算した総数の話であり、シフト制勤務・休日を考慮すると、実際の現場では実質10対1程度まで人員が薄くなる時間帯が生じると言われています(注1)。
「基準は満たしているはずなのに、現場は常に人手不足を感じる」——その正体は、この基準と実態のギャップにあります。
離職率のデータにも、同様のギャップが表れています。令和6年度の介護労働実態調査によれば、訪問介護員・介護職員をあわせた離職率は12.4%で、全産業平均14.2%を下回る水準です(注2)。数字だけを見れば「介護業界は特別離職率が高いわけではない」と読めます。しかし施設形態別に見ると、特定施設入居者生活介護は15.1%、グループホームは13.9%と、平均値の裏側にはばらつきが存在します。
「全体の数字」だけでなく、「自施設の実態」がどこに位置しているかを把握すること。
これが、介護福祉事業における人材確保のギャップ分析の出発点です。
詳しくは「介護福祉事業の労務管理・処遇改善加算支援」のページもご覧ください。
介護福祉事業:処遇改善加算額と月額賃金改善額の概算額
もう一つ、見えにくいギャップがあります。それは、地域・サービス種別ごとの介護報酬単価そのものです。
介護報酬は「1単位あたり◯円」という仕組みで計算されますが、この単価は全国一律ではありません。事業所が所在する地域の「地域区分」によって単価は変わり、令和8年6月には処遇改善加算の改定も行われました。にもかかわらず、多くの事業所様が、自施設の正確な単価や加算額を、以前の資料や感覚のまま把握し続けているのが実情です。
そこで、弊所が開発した「介護保険単価検索」を公開します。都道府県・市区町村・サービス種別を選ぶだけで、以下が分かります。
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1単位あたりの単価
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地域区分別の単価一覧表(令和6年度〜)
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サービス種別ごとの人件費割合
さらに、月の単位数(処遇改善加算分を除く)を入力すると
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処遇改善加算額
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月額賃金改善額(最低限度額)
も算出されます。計画申請書作成の前段階で、配賦額を決定する際に参考になるはずです。
「今の報酬額は、本当に正しいのか」——それを確認する第一歩としてお使いください(令和8年6月版)。
介護福祉事業:需給ギャップ分析×労働市場のクロス分析
もう一つ、データが活きる場面があります。それは、「次にどのエリアへ展開すべきか」という出店・拡張の判断です。
複数の候補エリアを比較するとき、見るべき指標は2つあります。
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供給の逼迫度(事業所1件あたりの認定者数——数字が大きいほど、供給に対して需要が多く、参入・増床の余地が大きいと読めます)
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需要の伸びしろ(要介護1・2など軽度認定者数の伸び率——これから需要がどれだけ増えるエリアか)
この2軸で候補エリアを並べると、「なんとなく良さそうな場所」ではなく、「今が良いのか、これから伸びるのか」を数字で切り分けられます。右上(供給が逼迫していて、なおかつ伸びている)エリアほど、有望と読めます。
▶川崎市・横浜市・大田区 通所介護 需給ギャップ比較
まずは川崎市・横浜市・大田区の3市区を例に、通所介護(デイサービス)でこの分析を行いました。
横浜市:事業所あたり80.9人とやや供給が充足気味な一方、認定者数の伸び率は+7.0%と3市で最も高く、「将来注視」のエリアです
大田区:横浜市に近い傾向(82.4人・+6.4%)で、こちらも成長を 注視すべきエリアです
川崎市:事業所あたり91.0人と3市で最も需給が逼迫していますが、伸び率は+4.3%と落ち着いており、「堅実」な市場といえます
▶川崎市・横浜市・大田区 通所介護 需給ギャップ×労働市場 クロス分析
この需給ギャップ分析を一歩進めると、もう一つ見落としがちな軸が見えてきます。労働市場の逼迫度です。「事業所が足りていない=出店のチャンス」と単純に判断するのは早計です。実際にスタッフを採用できるかどうかで、勝ち筋は変わってきます。
川崎市と横浜市について、ハローワークの求人データ(有効求人倍率・医療福祉分野の求人動向)を重ねてみたところ、対照的な姿が浮かび上がりました。
横浜市:施設あたりの逼迫度はやや緩やか(81.0人)ですが、需要成長率(+7.0%)・医療福祉分野の新規求人(前年同月比+41.2%)ともに突出しており、施設側も積極的に採用を仕掛けている「攻めるが人材確保の競争が激しい」市場です。
川崎市:施設あたりの逼迫度は最も高い(91.0人)にもかかわらず、医療福祉分野の新規求人は前年同月比▲5.8%と減少しています。労働市場自体は横浜より緩やか(有効求人倍率1.12倍、横浜1.42倍)で採用しやすい環境なのに、施設側の採用意欲は控えめ——「枠は逼迫しているのに、増員に踏み出せていない」市場と読めます。
「事業所が足りない」という需給ギャップの数字だけでは見えない、採用のしやすさ・現場の増員意欲まで含めて初めて、そのエリアの本当の勝ち筋が見えてきます(注3)。
▶市川市・船橋市・習志野市・八千代市 通所介護 需給ギャップ比較
同じ枠組みで、千葉県の東葛4市(市川市・船橋市・習志野市・八千代市)についても分析しました。
船橋市:認定者数14,287人,事業所数150件,事業所当たり認定者数95.3人(最も逼迫)2年成長率9.2%
市川市:認定者数8,428人,事業所数112件,事業所当たり認定者数75.3人2年成長率10.4%
八千代市:認定者数4,156人,事業所数68件,事業所当たり認定者数61.1人(最も充足)2年成長率10.6%(最高)
習志野市:認定者数3,593人,事業所数49件,事業所当たり認定者数73.3人2年成長率3.3%(最低)
船橋市が需給ともに最も逼迫しており規模も最大、市川市は逼迫度・成長率ともバランスが良く、八千代市は現状の供給に余裕があるものの成長率が最も高く「将来の先行出店」候補、習志野市は成長が鈍く優先度は下がる——という位置づけになります。
この分析は、他のエリア・他のサービス種別(訪問介護、居宅介護支援等)でも同様に作成できます。
エリア戦略を数字で裏付けたい場合は、ぜひご相談ください(注4)。
なお、この分析には前提もあります。
事業所の定員データは公表率が2〜4割程度にとどまるため、需給ギャップは参考値としてご覧ください(事業所数そのものの精度は高いです)。また、事業所数は「開設件数」であり、実際の空き状況・稼働率までは反映していません。出店の最終判断には、個別事業所への充足状況ヒアリングをおすすめします。
業種を問 わず使える:人件費構造のギャップ分析
ここまでご紹介したのは、トラック運送業・介護福祉事業、それぞれの業種特有のギャップでした。しかし、人件費の構造そのものは、業種を問わず共通の切り口で比較できます。
厚生労働省「就労条件総合調査(労働費用調査)」によれば、会社が実際に負担している人件費は、現金給与(基本給+賞与)だけではありません。法定福利費・退職給付費用・教育訓練費等を含めると、現金給与を100とした場合、産業計で121.9、業種によっては130前後まで膨らみます(注5)。現金給与だけを見ていると、実際に会社が負担している人件費総額を過小評価してしまう、ということです。
「うちの人件費は現金給与ベースでは把握しているが、法定福利費等を含めた実際の負担が、業種平均と比べて重いのか軽いのか分からない」——そんな声から、以下のツールを作りました。給与・賞与・法定福利費等の実額(決算書ベースの年間実額と平均従業員数からでも自動計算できます)を入力するだけで、22業種・企業規模別(企業規模計/1,000人以上)の統計データと、常用労働者1人1か月あたりの人件費構造を比較できます。
モデルケースで見る、弊所の進め方
ここまでご紹介したのは、公開データを使った分析例です。では、実際にご相談いただいた場合、どのように進むのか——具体的にイメージしていただくために、架空のモデ ルケースでご紹介します(注6)。
▶A社(従業員30名規模・トラック運送事業者、仮想モデル)
STEP1│最初のご相談
「利益が薄い気がするが、どこから手をつければいいか分からない」「ドライバーの離職が続いている」——A社の相談は、こうした感覚レベルの言葉から始まります。弊所ではまず、業界特有の制度対応状況(36協定、改善基準告示への対応状況等)や、現在どのようなデータを既にお持ちかを伺うところから始めます。
STEP2│データ収集の設計
次に、「何を、どう測るか」を一緒に設計します。多くの場合、勤怠データ・燃料費・車両台数・取引先別の運賃データなど、既に社内にあるものの、整理されていないデータが見つかり ます。ゼロから集めるのではなく、まず今あるものの棚卸しから始めるのが実務的です。ここで、簡易原価計算ツールのようなツールを使い、1台・1取引先あたりの概算原価を試算してみます。
STEP3│分析とギャップの発見
取引先別・ルート別に原価を分解していくと、「会社全体では黒字なのに、実は特定の取引先やルートだけが原価割れしている」といった、収支だけでは見えなかったギャップが浮かび上がってくることが多くあります。感覚で「なんとなく厳しい」と感じていた部分が、どの取引先の、どの費目に起因するのかが、具体的な数字として特定できる段階です。
STEP4│打ち手の設計と伴走
見えてきたギャップに応じて、運賃交渉の材料を整理する、賃金制度を見直す、採用・定着施策に投資する、といった具体的な打ち手に接続します。一度分析して終わりではなく、データを継続的に更新しながら、状況の変化に合わせて伴走するのが弊所のスタイルです。
以上はあくまで進め方をイメージしていただくための一例です。実際のご相談内容やデータの状態は事業者様ごとに異なりますので、まずは現状をお聞かせいただくところから始めます。
データが導く、次の一手
原価にせよ、人員配置にせよ、数字が明らかになって初めて、対策の優先順位が見えてきます。「どこから手をつけるべきか」が分かれば、限られた時間と予算を、最も効果の出るところに投じることができます。
そして、データで見える化することと、「組織の「癖」を変えること」は、両輪の関係にあります。数字が語る課題を、実際に職場で変えていくには、対話を通じた組織の再構築が欠かせません。
弊所がご支援できること
▶支援内容
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原価・人員配置など、何を、どう測るかというデータ収集の設計
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集めたデータの分析と、継続的なフィードバックの伴走
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見えてきた課題に対する、具体的な打ち手(賃金制度・評価制度・求人票の見直し等)への接続
まずはお話をお聞かせください
注1:人員配置基準「3対1」は常勤換算による基準であり、シフト制勤務を踏まえると時間帯によって実質的な配置は基準より薄くなる、という一般的な解説に基づく記述です。
注2:出典 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」結果 (https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf)
注3:出典 ハローワーク川崎「求人・求職情報」(令和8年6月分)、ハローワーク横浜「労働市場の動き」(令和8年5月分)。有効求人倍率は各所の原数値(非季節調整)のため、都道府県・全国の季節調整値とは単純比較できません。またハローワークの管轄区域は市内の一部区のみをカバーしている場合があり、市全域の数値とは必ずしも一致しません。介護職に限定した求人・賃金データは横浜側の資料に含まれていないため、産業大分類「医療・福祉」で比較しています。
注4:認定者数(要介護1・2の合計)は厚生労働省「介護保険事業状況報告」に基づく弊所集計データ、事業所数は厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公開データ(通所介護・地域密着型通所介護の合算、2026年6月末時点)を用い、弊所にて算出
注5:厚生労働省「令和3年 就労条件総合調査 労働費用調査」第36表(産業、企業規模別、常用労働者1人1か月平均労働費用)より。
注6:「A社」は特定の実在企業を示すものではなく、進め方をご説明するために作成した仮想のモデルケースです。実際のご相談内容は、機密保持の観点から公開しておりません。