今鶴実践社労士事務所|東京都中央区
介護福祉事業の労務管理
目次
令和8年度期中改定の概要
▶令和8年度期中改定とは
介護報酬改定は原則として3年に1度です。直近の通常改定は令和6年度(2024年度)に行われ、次は令和9年度(2027年度)の予定でした。にもかかわらず、今回、令和8年(2026年)6月に「期中改定」が実施されました。
これは異例のことです。政府がこのタイミングで動いた背景には、介護人材不足の深刻化と他産業との賃金格差の拡大があります。これまで幾度も処遇改善の取り組みは行われてきましたが、賃金格差は縮まらず、人材の流出は続いています。令和9年度の通常改定まで待てば、現場の疲弊はさらに進み、事業継続が困難な事業所が増えかねないーそういった判断が背景にあります。
▶介護人材確保への取り組み(5つの対応策)
介護業界では人材不足の解消が重要な課題となっています。令和8年6月の有効求人倍率は全職業において1.01倍であるのに対し、介護サービス職業従事者のそれは3.70倍と高水準です。今後の更なる高齢化への移行と生産人口の減少により、介護人材不足がますます顕著になることが予想されます。このため、政府は①介護人材の処遇改善、②多様な人材の確保と育成、③離職防止、定着促進、生産性向上、④介護の魅力向上、⑤外国人材の受け入れ環境の整備という5つの対応策に取り組んでいます。
▶介護現場の生産性向上
令和6年度報酬改定から続く課題が介護現場の生産性向上です。「介護職員等処遇改善加算」において大きく変更された職場環境要件では、ITの導入、業務プロセスの改善等による生産性向上への取り組みが求められるほか、ケアプランデータ連携システムの導入が強く勧められています。
▶令和8年6月適用の加算率等
・介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分) 厚生労働省

処遇改善加算の最新動向(令和8年6月~)
▶2024.1~2026.6の有効求人倍率の推移
政府の統計e-Statから取得した数値をもとに、弊所で作成したグラフです。
求人数は2024年前半の217〜224万件台から緩やかに減り、2026年5月に199.2万件で底打ち、6月は202.0万件へ小反発しています。下段の倍率(職業計)もほぼ同じタイミングで底打ちしており、両者の動きが一致しています。
求人数減について、AI・DXによる省人化をあげる向きがありますが、IT・大手企業の採用抑制に効いている一方で、介護・自動車運転・建設のような労働集約的職種の求人減は、人件費・最低賃金上昇によるコスト増や採用手控えの影響が大きいとみられます。

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日経の分析では「生成AIで人員削減が進む米国に対し、日本は仕事が減っていない」との指摘もあり、AI起因の削減は米国ほど顕著ではないとの見方も存在
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求人減の業種別内訳を見ると、卸売業・小売業(▲11.0%)、宿泊業・飲食サービス業(▲9.1%)、情報通信業(▲7.3%)が上位で、物価高・最低賃金引き上げによる採用抑制も重なっていると分析されている
つまりグラフの3職種(介護・自動車運転・建設)については、AI代替よりも人件費上昇や需要側の手控えが主因である可能性が高い、という見方が大勢です。
▶人材確保策としての処遇改善加算の考え方
処遇改善加算は「賃上げの原資確保」には有効ですが、「採用手控えの直接回避」策としては限定的です。加算は使途が賃金改善に限定されており、求人広告費・採用手数料などの採用コストそのものには充当できません。効果を出すには、加算による賃上げ→定着率向上→中途採用ニーズの減少、という間接的な経路で設計する必要があります。加算による賃上げは「定着」に効かせる設計とするのです。
賃上げによる離職防止・応募増加は、結果的に採用コスト(求人広告費・紹介手数料)の抑制につながります。
▶単価検索・処遇改善加算額・月額賃金改善額計算ツールをご用意しています
モデルケースで見る、 弊所の進め方
STEP1|最初のご相談
「処遇改善加算はきちんと算定しているのに、給与費比率が年々上がって経営を圧迫している」「求人を出しても応募が来ない」——C事業所からのご相談は、こうした言葉から始まりました。加算の算定漏れではなく、"設計"の問題であることが少なくありません。
STEP2|現状把握(データと現場の両輪)
決算書の実額を「経営ベンチマーク診断」に入力し、給与費比率を業界平均・地域区分別の数値と比較。あわせて、事業所所在地の要介護認定者数の推移や、同業他社の求人条件を確認しました。C事業所の給与費比率は業界平均をやや上回っており、加算による賃上げが「定着」ではなく「離職防止に至らない一律配分」になっていたことが見えてきました。
STEP3|制度設計(処遇改善加算×求人票)
経験・技能のある職員への重点配分に設計を見直し、月額の固定給に組み込む形に変更。あわせて、求人票の職種欄・仕事内容欄を、90文字の壁を意識した具体的な書き方に見直しました。「賃上げは定着に、求人票は応募の入口に効かせる」という両輪の設計です。
STEP4|実行とフォロー
配分基準を就業規則・賃金規程に明文化し、職員へ配分理由を説明。求人票の反響を数か月追い、応募数の変化を見ながら必要な微調整を行いました。
※これは進め方をイメージしていただくための一例です。実際のご相談内容は事業者様ごとに異なり、機密保持の観点から具体的な内容は公開しておりません。
求人票の書き方も、人材確保の重要な武器です
▶なぜ「同じ待遇」でも応募に差がつくのか
先述の通り、介護サービス職業の有効求人倍率は3.70倍(令和8年6月)と、全職業平均の1.01倍を大きく上回っています。求職者から見れば、選び放題の「売り手市場」です。処遇改善加算による賃上げは、応募者を増やす直接的な施策としては限定的である一方、求人票そのものの書き方は、今すぐ着手できる、コストのかからない改善策です。
ハローワークインターネットサービスでは、求人検索の一覧画面に、仕事内容欄の冒頭90文字しか表示されません。この90文字で興味を引けなければ、どれだけ待遇を良くしても、詳細ページさえ開いてもらえません。
▶介護職の求人票、改善のポイント
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職種欄(改善前):介護職
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職種欄(改善後):介護職/チームケア/週休二日制・シフト相談可
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仕事内容欄では、「利用者様への生活支援全般」で終わらせず、「入社後3か月は先輩職員のスーパーバイズを受けながら、業務の流れを覚えていただきます」など、未経験の方が抱える不安に先回りして応える書き方が、応募のハードルを下げます。
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「アットホームな職場です」のような曖昧な表現より、「20代〜60代まで幅広い世代のスタッフが在籍」「有給休暇取得率◯%」など、具体的な数値で語ることが信頼につながります。
処遇改善加算による賃上げが「定着」に効くのに対し、求人票の書き方の見直しは「応募の入口」に効きます。両輪で取り組んで初めて、人材確保の実効性が高まります。
▶求人条件の見直しは「魅力ある職場づくり」とセットで
応募が集まらない場合、求人条件の緩和(年齢制限の撤廃、資格要件の見直し、賃金の引き上げ等)が有効なことがあります。ただし、条件を書き換えるだけでなく、その背景にある「魅力ある職場づくり」——評価制度、人材育成、多様な働き方、労働環境の改善——に取り組むことが、根本的な解決につながります。実際、従業員満足度を重視する企業ほど、人材確保も業績も安定している、というデータもあります。
求人票は、単なる募集要項ではなく、自社の「魅力ある職場づくり」の到達点を映す鏡でもあります。
魅力ある職場づくりと求人票の見直しも支援します
▶「応募が集まる求人票」ページで求人票の具体的な書き方を解説しています
弊所がお手伝いできること
よくあるご質問
Q. 令和8年度の期中改定は、うちの事業所にも関係ありますか?
A. 介護保険サービスを提供している事業所であれば、基本的に対象になります。3年に1度が原則の改定が、人材不足の深刻化を理由に異例のタイミングで実施されたものです。詳しくは本ページ冒頭「令和8年度期中改定の概要」をご覧ください。
Q. 処遇改善加算を算定していますが、給与費比率が上がって経営を圧迫しています。
A. 加算による賃上げそのものは必要な対応ですが、給与費比率が業界平均を大きく超えている場合は、収支構造や配分設計に見直しの余地があることがあります。まずは「経営ベンチマーク診断」で、業界平均・地域区分別の数値と比較してみることをお勧めします。
Q. 処遇改善加算は、具体的にいくらもらえますか?
A. 所在地・サービス種別・月あたりの介護保険点数によって変わります。「データで見える化する」ページの単価検索・計算ツールで、概算額を試算いただけます。
Q. 求人を出しても応募が来ません。賃金を上げるしかないでしょうか?
A. 賃上げは「定着」には効きますが、「応募の入口」には求人票そのものの書き方が効きます。ハローワークの一覧表示は冒頭90文字しか見えないため、そこで興味を引けるかが重要です。詳しくは「応募が集まる求人票」ページをご覧ください。
Q. 処遇改善加算の配分は、事業所の裁量で自由に決めていいのですか?
A. 令和6年度改定で配分ルールは柔軟化されましたが、「経験・技能のある介護職員への重点配分」という基本方針は維持されています。裁量が広がった分、事業所側で配分基準を就業規則・賃金規程に明文化しておくことが重要です。
Q. まずは何から相談すればいいですか?
A. 決算書がお手元にあれば経営ベンチマーク診断から、採用にお困りであれば求人票のご相談から、どちらからでも構いません。初回相談は30分無料です。
顧問契約でできること
社会的課題への取り組み
・2024/6/11 「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定・公表されました。
