top of page

​HOME > 業務のご案内 > 雇用保険の加入漏れ──遡及加入と労働保険料の精算

​雇用保険の加入漏れ──遡及加入と労働保険料の精算

1. 加入漏れに気づいたら、さかのぼって手続きします

雇用保険は、次の2つを満たす労働者を雇ったときに、加入の手続きをします。パートやアルバイトという呼び方には関係ありません。

 

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上(※1)

  • 31日以上引き続き雇用される見込みがある

 

資格取得届の期限は、要件を満たした日の属する月の翌月10日までです。期限を過ぎていても、要件を満たしていたことが確認できれば、要件を満たした日にさかのぼって加入の手続きをします(遡及加入)。

 

加入漏れは、次のような場面で起こりがちです。

 

  • 「アルバイトは雇用保険に入らなくてよい」と思っていた

  • 入社時は週20時間未満だったが、途中で勤務時間が増えた

  • 本人から「入らなくていい」と言われた(本人の希望で加入しないことはできません)

​

気づいた時点で、早めに手続きをすることが大切です。さかのぼれる期間は、手続きが遅れるほど短くなるためです(→2)。

 

※1 2028年(令和10年)10月1日からは、加入要件が「週10時間以上」に広がります。

​

2. さかのぼれるのは、原則2年までです

雇用保険では、ハローワークが「被保険者になったこと」を確認した日(確認の日)から2年前の日までしか、さかのぼって被保険者期間に数えられません(雇用保険法第14条第2項第2号、第22条第4項)。2年より前から要件を満たしていた場合も、資格取得日は「確認の日の2年前の日」として扱われます。

​場合

​給与から雇用保険料を差し引いていなかった 

 

​給与から雇用保険料を差し引いていたのに、届出をしていなかった

​

​さかのぼれる範囲

確認の日から2年前まで

​賃金台帳や給与明細で差し引いていたことが確認できる、

最も古い時期まで

(2年を超えられる。雇用保険法第22条第5項)

2年という区切りは、労働保険料を徴収できる期間(時効2年。労働保険徴収法第41条)とも重なっています。

 

弊所では、確認の日から2年前の日がいつになるかを先に計算し、さかのぼれる期間を最大限に取れる日に、ハローワークへ提出するよう段取りを組んでいます。

​

3. 必要な書類

ハローワークにより求められる範囲が少しずつ異なりますが、主な書類は次のとおりです。

​書類

​雇用保険被保険者資格取得届

​遅延理由書

​

​労働者名簿、雇用契約書(労働条件通知書)

​

​出勤簿またはタイムカード

​賃金台帳

​

​疎明書

​

​ポイント

​マイナンバーの記載が必要です

​手続きが6か月以上遅れた場合に必要

(任意様式で可とするハローワークが多い。→4)

​雇入日と、週の所定労働時間を確認します

契約書がない場合は、ハローワークに相談

​雇入日(または確認の日の2年前)から現在まで

​同上。基本給・手当など、賃金の種類ごとの額がわかるもの

(源泉徴収簿では確認できません)

​2年を超えてさかのぼる場合

(保険料を差し引いていたことの疎明)

4. 遅延理由書の書き方

遅延理由書には、主に次のことを書きます。

 

  • 対象者の氏名

  • 被保険者の要件を満たした日(雇入日、または勤務時間が週20時間以上になった日)

  • 資格取得日(2年を超える場合は、確認の日の2年前の日)

  • 手続きが遅れた理由

 

遅れた理由は、事実をそのまま、短く書きます。取り繕う必要はありません。

​

 (記載例)
  アルバイトとして雇い入れた従業員について、雇入れ当初から週20時間以上勤務していたが、

  アルバイトは雇用保険の対象外であると誤認しており、加入要件の確認が不十分であったため、

  資格取得の手続きが遅れました。
  なお、雇入日は確認の日の2年前の日より前であるため、資格取得日は確認の日の2年前の日としています。
  今後は、雇入れの際に加入要件を確認し、期限内に届け出るよう留意いたします。

​

「制度を知らなかった」ことは、それ自体では手続きを免れる理由にはなりません。

遅れた経緯と、今後どうするかを正直に書くことで、手続きは受け付けられます。

​

5. さかのぼった期間の保険料(本人負担分)の扱い

雇用保険料は、事業主と労働者の双方が負担します。

さかのぼった期間の本人負担分をどうするかは、あらかじめ決めておく必要があります。

​

  • 給与からの控除は、賃金を支払うその都度、その賃金に応じた分を差し引くのが原則です(労働保険徴収法第32条、同施行規則第60条)。過去の期間の分を、あとから一度にまとめて給与から差し引くことは想定されていません。

  • 本人に負担してもらう場合は、本人と話し合い、了解を得たうえで、給与とは別に精算するのが穏当です。

  • 会社が本人負担分も負担する場合、その負担額は本人への経済的な利益として、給与として所得税の課税対象になります。源泉徴収の扱いは、顧問税理士とご相談ください。

​

弊所では、加入漏れが会社側の確認不足による場合は、さかのぼった期間の本人負担分は会社で負担していただくようご提案しています。本人との関係をこじらせないためです。

​

6. 労働保険料の精算(年度更新の修正)

雇用保険にさかのぼって加入すると、その人の賃金を、雇用保険の保険料の計算に入れ直す必要があります。

​▶対象になる年度

労働保険料は、保険年度(4月1日〜翌年3月31日)ごとに計算し、翌年6月1日〜7月10日の年度更新で申告します(労働保険徴収法第19条)。

​年度

当年度(いま進行中の年度)

​

前年度・前々年度(年度更新が済んでいる年度)

​手続き

次の年度更新で、確定保険料の賃金総額に含めて申告します。

今すぐの手続きは不要です

申告していなかった分を、労働局に報告して精算します

  • 労災保険は、雇用保険と違い、パート・アルバイトを含むすべての労働者が対象です。年度更新で労災保険の賃金総額にすでに入れていれば、増えるのは雇用保険料の分だけです。一般拠出金も労災保険の賃金総額で計算するため、変わりません。

  • 労災保険の賃金総額にも入れていなかった場合は、労災保険料と一般拠出金も精算の対象です。

​

▶精算の流れと追徴金

  1. 対象者の、年度ごと・月ごとの支払賃金額をまとめ、労働局(労働保険の徴収担当)へ報告します(例:福岡労働局では「遡及被保険者資格取得に関する賃金支払額報告書」という様式を用意しています。様式や名称は労働局により異なります)

  2. 労働局が、報告にもとづいて労働保険料の額を決定し、納入告知書(納付書)を送ってきます(労働保険徴収法第19条第4項)

  3. 通知を受けた日から15日以内に納付します(同条第5項)

​

このように政府が決定した不足額には、追徴金として10%が加わります(労働保険徴収法第21条)。

​

  • 不足額の1,000円未満の端数を切り捨てた額に、10%をかけます

  • 不足額が1,000円未満のときは、追徴金はかかりません

  • 天災その他やむを得ない理由による場合は、かかりません
     

​▶計算の例(一般の事業)

​月給12万円のアルバイト1名(週20時間以上)が、令和6年10月から雇用保険に加入していなかった場合。労災保険の賃金総額には入れていたものとします。

​年度

令和6年度

(R6.10~R7.3)

令和7年度

​(R7.4~R8.3)

令和8年度

​(R8.4~)

​期間の賃金

​72万円

​

144万円

​

ー

​

​雇用保険料率

​15.5/1,000

​

14.5/1,000

​

13.5/1,000

​

​雇用保険料

​11,160円

​

20,880円

​

次の年度更新で申告

​

​追徴金(10%)

1,100円

​

2,000円

​

─

​

※雇用保険料率は年度ごとに変わります。

一般の事業の料率は、

令和6年度15.5/1000、令和7年度14.5/1000、令和8年度13.5/1000です(農林水産・清酒製造、建設の事業は別の料率)。

 

※追徴金は、年度ごとの不足額について、1,000円未満を切り捨てて計算しています。

 

1人あたりの金額は大きくありませんが、対象者が複数いたり、期間が長かったりすると積み上がります。

早く気づいて、早く手続きをするほど、負担は小さくなります。
 

7. 手続きの流れ

​順番

​1

​

​2

​

​3

​4

​

​5

​

​6

​

​7

​すること

対象者の雇入日・勤務時間・賃金を確認し、加入要件を満たした日を特定する

確認の日から2年前の日を計算し、資格取得日と提出日を決める

本人負担分の扱いを決め、本人に説明する

資格取得届・遅延理由書・添付書類をハローワークへ提出する

前年度・前々年度の賃金を労働局へ報告し、決定された保険料・追徴金を納付する

本人負担分を会社が負担した場合は、給与課税の扱いを税理士と確認する

当年度分は、次の年度更新で申告する

​担当

会社・社労士

​

社労士

​

​会社

社労士

​

会社・社労士

​

会社・税理士

​

​会社・社労士

弊所では、雇用保険の遡及取得は電子申請でおこない、労働保険の修正申告は申請書を用いて労働局の窓口でおこなっています。

​

8. 加入漏れを防ぐために

  • 雇い入れるとき、週の所定労働時間と雇用の見込み期間を、雇用契約書(労働条件通知書)に必ず書く

  • 勤務時間が増えたとき(週20時間以上になったとき)に、加入の手続きにつなげる仕組みを作る

  • 「アルバイトだから」「本人が希望しないから」で判断しない

  • 年度更新の前に、雇用保険の被保険者と、給与から雇用保険料を差し引いている人の名簿が一致しているかを確かめる

  • 2028年10月の適用拡大(週10時間以上)に向けて、週10〜20時間の人を今のうちに把握しておく

 

初めて人を雇うときの手続きは次のページもご覧ください。

​

​9. よくあるご質問

Q1 雇用保険の加入漏れは、何年前までさかのぼれますか

A1 原則として、ハローワークが被保険者になったことを確認した日から2年前までです。給与から雇用保険料を差し引いていたことが賃金台帳や給与明細で確認できる場合は、2年を超えて、差し引いていたことが確認できる最も古い時期までさかのぼれます。

​

Q2 給与から雇用保険料を差し引いていなかった場合も、さかのぼって加入できますか
A2 できます。加入の要件(週20時間以上、31日以上の雇用見込み)を満たしていれば、確認の日から2年前までさかのぼって加入します。手続きが6か月以上遅れた場合は、遅延理由書と、出勤簿・賃金台帳などの添付書類が必要です。

​

Q3 さかのぼった期間の本人負担分は、今の給与からまとめて差し引けますか

A3 雇用保険料の給与からの控除は、賃金を支払うその都度、その賃金に応じた分を差し引くのが原則です。過去の期間の分を一度にまとめて差し引くことは想定されていません。本人に負担してもらう場合は、本人の了解を得て給与とは別に精算するか、会社で負担します。会社が負担した場合は、その額が本人の給与として課税されます。

​

Q4 年度更新はやり直しになりますか。追徴金はかかりますか
A4 年度更新が済んでいる前年度・前々年度の分は、対象者の賃金を労働局に報告し、労働局が決定した労働保険料を納付します。政府が決定した不足額には、追徴金として10%が加わります(不足額が1,000円未満のときはかかりません)。いま進行中の年度の分は、次の年度更新で申告すれば足ります。

​

Q5 従業員本人が、自分でハローワークに加入を求めることはできますか
A5 できます。被保険者である人、被保険者であった人は、いつでもハローワークに、被保険者になったことの確認を請求できます(雇用保険法第8条)。会社として加入漏れに気づいた場合は、本人から請求される前に、会社から手続きをするのが望ましい対応です。

​

Q6 すでに退職した人も、さかのぼって加入できますか
A6 できます。在職していた期間について、資格取得と資格喪失の手続きを同時に行います。離職票が必要な場合は、あわせて離職証明書も提出します。

​

  • 雇用保険法第6条(適用除外:週20時間未満、31日以上の雇用見込みがない者)、第7条(被保険者に関する届出)、第8条(確認の請求)、第9条(確認)、第14条第2項第2号(被保険者期間:確認の日の2年前の日前の期間を除く)、第22条第4項・第5項(2年前の日のみなし、保険料控除が明らかな場合の特例)、第83条(届出義務違反の罰則)

  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第19条(確定保険料、第4項:政府による決定、第5項:15日以内の納付)、第21条(追徴金)、第32条(賃金からの控除)、第41条(時効2年)

  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第60条(賃金を支払う都度の控除)

  • 福岡労働局「遡及被保険者資格取得に関する賃金支払額報告書」作成シート(当年度分は次の年度更新で申告、前年度・前々年度分は報告、追徴金10%の決定・納入告知書)

  • ハローワーク福岡東「雇用保険被保険者資格取得の遡及手続きについて(手続きが6か月以上遅れた場合)」、ハローワーク福岡南「遡及確認時の提出書類」、ハローワーク津島「6ヶ月以上の遡及取得申請時の必要書類について」

  • 厚生労働省「令和7年度 雇用保険料率のご案内」「令和8年度 雇用保険料率のご案内」

  • 雇用保険の適用拡大(週10時間以上、2028年10月1日施行):雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)

 

法令の確認日:2026年9月26日

雇用保険加入手続等のご相談を承っています。

電子申請・DX・AIと、経営環境の変化をお感じの企業様もどうぞお気軽にご相談ください。

​

​

bottom of page