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​社宅の課税と社会保険 ──令和8年10月、現物給与の価額が畳から㎡に変わります

社宅は、ひとつの制度で語れません。

同じ部屋を、同じ家賃で貸していても、労働基準法では賃金ではなく、社会保険では報酬に入り、所得税では条件を満たせば課税されません。結論が3つに分かれます。

そして令和8年10月1日、社会保険の側で42年ぶりの改正があります。

住宅の現物給与の価額が、畳1畳あたりから、総面積1平方メートルあたりに変わります。

台所・浴室・廊下も面積に入るようになります。

このページでは、3つの制度の違いと、10月の改正で何が起きるかを整理しました。

数字を入れて確かめられる計算ツールも置いています。

1. 同じ社宅が、制度によって3つに分かれる

​ 

 

​労働基準法

 

​社会保険

 

​所得税

​使う言葉

 

​賃金

 

​報酬

 

​給与所得

​定義

​労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの

(第11条)

​労働者が労働の対償として

受けるすべてのもの

(健康保険法第3条第5項)

 

​ー

​社宅の扱い

​原則として賃金ではない

(福利厚生)

 

​もともと報酬に含まれる

​本人負担が賃貸料相当額の50%以上(使用人の場合)なら課税されない

分かれ目は、「支払う」か「受ける」かの一語です。

労働基準法は、使用者が労働の対償として支払うものを賃金と定めています。福利厚生として住まいを貸すことは、労働の対償の支払いではないため、賃金には当たりません。

社会保険は、労働者が受けるものを報酬と定めています。住まいを借りられるという利益は、受けているものです。だから報酬に入ります。

さらに健康保険法第46条・厚生年金保険法第25条は、報酬の一部が通貨以外で支払われる場合の価額を厚生労働大臣が定めると規定しています。社会保険は「社宅は報酬である」ことを前提に、その評価方法まで用意しています。

現物給与の賃金台帳/給与明細への記載は必要か

賃金台帳や給与明細に現物給与の価額を記載する必要は原則としてありません。

賃金台帳は労働基準法の帳簿(労働基準法施行規則第54条)、給与明細は所得税法の書類(所得税法第231条)であり、どちらも社会保険の報酬を書く場所ではないからです。

 

ただ、記載を禁止されているわけでもありません。

​記載する場合には、課税金額への算入/非算入、総支給額への算入/非算入、労働保険料算定基礎への算入/非算入等に注意して記載する必要があります。

2. 令和8年10月1日、住宅の現物給与の価額が変わります

 

42年ぶりの改正です。単位と、対象になる範囲の両方が変わります。

​単位

​対象範囲

​東京都

千葉県

​神奈川県

​令和8年9月30日まで

​居住室の畳数(1畳あたり)

​居住用の室のみ

​2,830円/畳

​1,760円/畳

​2,150円/畳

​令和8年10月1日から

​総面積1㎡あたり

​台所・トイレ・浴室・廊下も含む

​1,330円/㎡

​830円/㎡

​1,010円/㎡

 

別棟の物置・車庫、営業用の付属建物(商品倉庫・作業場など)は、面積に含めません。アパート・マンションなどの共同住宅は、共用の廊下・階段を除いた専用部分の床面積です。

 

同じ住宅に複数の被保険者が住んでいる場合は、総面積を被保険者の数で割って、1人分を算定します。

 

なお、食事の現物給与の価額は、半年早い令和8年4月1日から改正されています。

 

社会保険の月額変更届が必要になることがある

本人負担額を変えていなくても、月額変更届が必要になることがあります。ここが見落とされやすいところです。

日本年金機構は、Q&Aで、現物給与の価額の改正を「固定的賃金の変動」に当たるとしています。

会社が金額を動かしたかどうかではなく、報酬の額が制度上変わったかどうかで判断されるためです。

 

価額が上がれば、「価額 − 本人負担額」が増えます。本人負担額を据え置いていても、報酬は増えています。

新しい価額を初めて支払った月を起算月として、3か月の平均と従前の標準報酬月額に2等級以上の差があれば、随時改定の対象です。

各月とも支払基礎日数が17日以上必要です。

起算月は、給与の支払いのサイクルで変わります。

支払い方​

​当月払い

翌月払い

​起算月

​令和8年10月

​令和8年11月

​改定月

​令和9年1月

​令和9年2月

来年の算定基礎届まで何もしなくてよい、という理解は誤りです。

​随時改定の判定(月額変更届の提出の要否の判定)が必要になります。

3. 所得税──賃貸料相当額と、50%のライン

 

ここでは国税庁HP等に記載されている一般的な解説をしています。

​詳細は必ずお近くの税務署や、税理士さんへお問い合わせください。

​▶使用人(従業員)に貸す場合

賃貸料相当額は、次の3つの合計です。

1. その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%

2. 12円 × (建物の総床面積㎡ ÷ 3.3)

3. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

本人から受け取っている家賃が、この賃貸料相当額の50%以上であれば、差額は給与として課税されません。

無償で貸せば賃貸料相当額の全額が、50%未満しか受け取っていなければ差額が、給与として課税されます。

自社所有でも、他から借りて貸す場合でも、同じ式です。借上社宅でも、貸主から固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。

​▶役員に貸す場合

役員に貸す場合は、50%ルールが使えません

役員は、賃貸料相当額の全額を受け取っていないと、差額が課税されます。さらに、住宅の規模によって計算式が変わります。

区分

​小規模な住宅

​小規模でない住宅(自社所有)

​小規模でない住宅(借上)

豪華住宅

​賃貸料相当額

​使用人と同じ3つの合計

​{(建物の課税標準額×12%)+(敷地の課税標準額×6%)}÷12

​会社が払う家賃の50%と、上の始期の額のいずれか多い方

​計算式によらず、通常支払うべき使用料

 

小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物では床面積132㎡以下、30年を超える建物では99㎡以下の住宅です。

木造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年ですので、木造は132㎡、鉄筋コンクリート造は99㎡が分かれ目になります。

自社所有で法定耐用年数が30年を超える場合は、12%ではなく10%です。

 

豪華社宅は、床面積240㎡超のもののうち、取得価額・支払賃貸料・内外装の状況などを総合して判定します。

240㎡以下でも、プールなど役員個人の好みを著しく反映した設備があれば該当します。

▶実際に支払っている「家賃」の出番はほとんどない

実際に支払っている家賃は、原則として使いません。

所得税は固定資産税の課税標準額から、社会保険は国が定めた価額から、それぞれ計算します。

会社が家主に実際に支払っている賃料が登場するのは、役員に小規模でない住宅を貸している場合だけです。

 

「家賃の何割かを本人から取っておけば大丈夫」という理解には、根拠がありませんのでご注意ください。

4. 制度ごとの結論は、こう分かれます

 

実例で見ると、断絶がよくわかります。

 

木造・総床面積120.89㎡の住宅を借り上げ、従業員に貸している場合。

建物の固定資産税の課税標準額は6,259,693円、敷地は3,720,968円。本人負担額は月24,200円。

事業所は東京都としています。

制度

 

​労働基準法

 

​社会保険

 

​所得税

​結論

賃金ではない

​賃金台帳・給与明細に原則載せない

1,330円×120.89㎡=160,783円

本人負担24,200円を控除して

​136,583円を報酬に加算

賃貸料相当額は21,145円

​本人負担額24,200円はこれを上回るため、課税されない

​金額(月額)

 

 

136,583円

 

0円

同じ社宅、同じ本人負担額で、税務では「本人が払いすぎ」、社会保険では「136,583円の現物給与」という結論になります。

5. 計算ツール

数字を入れると、3つの制度の結論をまとめて計算します。47都道府県の価額を収めてあります。

▶固定資産税の課税標準額は、賃借人であれば入手できる

 

固定資産税の課税標準額は、評価額とは別の数字です。

借上社宅であれば、賃借人である会社が自分で市区町村の窓口で確認できます。

地方税法第382条の2第1項および同法施行令第52条の14第3号により、対価を支払って家屋を使用する権利を持つ者は、その家屋と敷地の固定資産課税台帳を閲覧できます。

賃貸借契約書を持参すれば足ります。家主に依頼する必要はありません。

6. よくあるご質問

​作成中です。

所得税:国税庁タックスアンサー No.2597(使用人に社宅や寮などを貸したとき)、No.2600(役員に社宅などを貸したとき)。いずれも令和8年4月1日現在法令等。所得税法第9条・第36条、所得税法施行令第21条・第84条の2、所得税基本通達9-9・36-15・36-40〜42・36-45・36-47。法定耐用年数は国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」。

社会保険:健康保険法第3条第5項・第46条、厚生年金保険法第25条。現物給与の価額は令和8年厚生労働省告示第94号。取扱いは令和8年3月17日 基徴収発0317第1号・保保発0317第2号・年管管発0317第13号。価額の一覧は日本年金機構「全国現物給与価額一覧表」。

労働基準法:第11条(賃金の定義)、労働基準法施行規則第54条(賃金台帳)。給与明細は所得税法第231条・同法施行規則第100条。

固定資産課税台帳の閲覧:地方税法第382条の2第1項、同法施行令第52条の14第3号。

 

このページと計算ツールは、上記の法令・通達等に基づく一般的な説明です。

個別の事情により結論が変わることがあります。実際の申告・届出の前に、所轄の税務署・年金事務所または専門家にご確認ください。

今鶴実践社労士事務所では、貴社の状況に合わせたご相談を承っています。

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